CEマーキングの自己宣言 (適合証明書の注意点)
*この記事は、2024年04月03日に公開された記事です。
CEマーキングにおける自己宣言の「適合証明書」について、欧州委員会の各指令のホームページにも「警告」として取り上げられておりますが、欧州認証機関NB以外の第三者評価会社などが発行している「適合証明書」について、欧州委員会が、警告を発しています。
この警告は、製造者自身が知っておかなければならない重要な内容であり、CEマーキングの適合証明に対する正当性を保証するためのものです。
CEマーキングの適合証明には、「製造者による自己宣言」と「欧州認証機関NBによる認証」という二つの方法があり、これらはCEマーキング関連法令に対する適合性を証明するための手段として用いられます。
製造者による「自己宣言」は、製造者自身が製品が関連法令に適合していることを宣言する方法であり、「欧州認証機関NBによる認証」は、欧州委員会から認定された第三者認証機関が、製品の適合性を確認し証明する方法です。
今回の欧州委員会による警告は、製造者が依頼したコンサルティング会社などが独自に発行している「適合証明書」というものが、誤解を招くものであることを伝えています。
<コンテンツ一覧>
- 1. 欧州認証機関NBとは
- 2. 欧州認証機関NBが発行する「適合証明書(CoC)」について
- 3. 欧州認証機関NB以外の第三者機関が発行している「適合証明書」について
- 4. 欧州委員会からの警告
- 5. イーエムテクノロジーのサービス
1. 欧州認証機関NBとは
まず、知っておいて頂きたいのは、欧州認証機関NBの役割です。
欧州委員会が、認定した第三者認証機関NBは、欧州委員会からの要求を製造者、認定代理人、輸入業者、供給(流通)業者に向けて「通知(Notification)」する役割があります。
欧州認証機関NBは、認定された範囲(スコープ)の中で製造者などに対し、CEマーキング法令の適合性について認証を行っております。
認証機関NBは、認定を受けた自身の範囲内であれば、認証書(Certificate)を発行することができます。
認定範囲外である分野に対しては、認証行為はできません。
また、認証機関という立場は、中立的で独立した第三者機関であることから、製造者に対するコンサルティングやアドバイスなど、依頼者(製造者など)への肩入れ行為は、固く禁止されております。
2. 欧州認証機関NBが発行する「適合証明書(CoC)」について
また、欧州認証機関NBは「認証」だけでなく、製造者などから依頼を受けて、法令/規格の適合性評価を行った場合、「適合証明書 CoC (Certificate of Conformity)」を発行することもあります。
この場合は、欧州認証機関NBが、製造者から依頼を受けて任意で発行しているものになりますが、欧州認証機関NBが認定を受けている範囲(スコープ)内であれば、一定の信頼性を与えるエビデンスとして、扱われるものと思われます。
ただし、欧州認証機関NBが発行した適合証明書 CoCがあったとしても、適合性に関する全責任は製造者が負わなければなりません。
3. 欧州認証機関NB以外の第三者機関が発行している「適合証明書」について
そして、今回、欧州委員会から警告として記載されている欧州認証機関NB(Notidied Bodies)以外の第三者評価会社/コンサルティング会社などから、誤解を招く形で発行されている「評価会社が発行している適合証明書」というものが存在します。
欧州認証機関NB以外の第三者評価機関から発行される「適合証明書」は、任意の証明書として扱われ、規制外の証明書として、”voluntary certificates”などと呼ばれております。
これは、コンサルティング会社などが独自に発行しているもので、法的な効力は一切ありません。
欧州委員会は、このような慣行は、誤解を招くものであると警告しています。
欧州認証機関NB以外の第三者評価会社/コンサルティング会社などから発行されている「適合証明書」は、現地の市場監視や通関で、大きな誤解を招くものとして問題視されております。
お客様自身も、このことをご存じでないことが多く、現地当局とお客様の間で、混乱を招いているようです。
例えば、お客様が欧州認証機関NB以外の日本国内のコンサルティング会社などを通じて、評価を行った場合に、そのコンサルティング会社などから適合証明書が発行されることがあります。
通常、欧州認証機関NBの認定範囲(スコープ)内である場合にのみ、そのスコープ内で欧州認証機関NBだけが、適合証明書 CoCを発行することができます。
欧州認証機関NBでも、その認定スコープを持たない場合は、欧州認証機関NBであったとしてもその製品の「適合証明書 CoC」というものは発行できません。
例えば、欧州認証機関NBの認定スコープが、機械指令であった場合、その欧州認証機関NBは、機械指令以外の分野の「適合証明書 CoC」というものは発行できません。
いくら欧州認証機関NBだとしても、認定スコープにその製品分野が認定されていないのであれば、その製品の「適合証明書 CoC」は発行できないという点にも注意して下さい。
欧州認証機関NBであったとしても、認定スコープを持っていない場合は、欧州認証機関NBとしての立場で適合証明書を発行することはできません。
このように、その製品分野のスコープを持っていない欧州認証機関NB、欧州認証機関NB以外の第三者評価会社などが発行している適合証明書は、誤解を招くエビデンスとして扱われ、かえって不信感を与えることにもなりますので、十分に注意する必要があるということです。
このような、欧州認証機関NB以外の第三者評価会社から発行された適合証明書は、製造者自身による自己宣言のEU適合宣言書をさらに信頼性のあるものと見せるために、適合性へのエビデンス書類として用いられておりますが、適合証明を行うための法的な効力は一切ございません。
イーエムテクノロジーもコンサルティングや適合性評価を行っておりますが、弊社からお客様に対して、このような「適合証明書」を発行することは致しておりません。
規制されていない証明書に関する警告
適合証明書というものは、製造者自身がEU法令への適合性を証明するためのものです。
「欧州認証機関NBが発行する適合証明書 CoC」は、認証を行うわけではありませんが、適用規格に対し、適合しているものと判断できる場合に、欧州認証機関NBが製造者からの依頼を受けて任意で発行しているものです。
欧州認証機関NBが製造者から依頼を受けて任意で発行している「適合証明書 CoC」、コンサルティング会社などが独自発行している「適合証明書 (voluntary certificates)」があるということをおさえておいて下さい。
そして、欧州認証機関NBが任意で発行している適合証明書 CoCと、コンサルティング会社などが独自に発行している適合証明書では、大きな違いがあるということを認識しておいて下さい。
4. 欧州委員会からの警告
欧州委員会からの警告の原文は、下記の欧州委員会CEマーキングの関連ホームページをご確認下さい。
ページ下部にある「Inportant notices」という欄に記載されております。
関連ページの例 (機械)
https://single-market-economy.ec.europa.eu/sectors/mechanical-engineering/machinery_en
関連ページの例 (EMC指令)
欧州委員会からの警告(原文と参考和訳)
参考として、警告の原文と、参考和訳を掲載しておきます。
和訳は参考ですので、正しくは原文をご確認下さい。
"Unregulated certificates warning"
"規制されていない証明書に対する警告"
Unregulated certificates, which are often called ‘voluntary certificates’ besides other names, are often issued for some products covered by EU harmonisation legislation by certification bodies not acting in their capacity as notified bodies under EU law.
欧州委員会は、EUの整合法によってカバーされる製品に対して、EU法の下で通知機関(NB)としての役割を果たしていない認証機関が発行する「自発的証明書 (voluntary certificates)」とも呼ばれる無規制の証明書に関して警告を発しています。
These practices are misleading since only notified bodies may issue certificates of compliance for harmonised products and only in the area for which they are notified.
これらの証明書は、整合した製品に対する適合証明書を発行できるのは、通知機関(NB)のみであり、かつ、それらが通知されている分野においてのみ発行可能であるため、誤解を招くものです。
For example, if a body is notified to issue certificates for machinery, it should not issue certificates (voluntary or other) for non-machinery products (such as personal protective equipment – masks).
例えば、あるNB機関が、機械用の証明書を発行するために通知されている場合、(個人用保護具のような)非機械製品に対しては(自発的なものを含め)証明書を発行してはなりません。
Please note that, under EU law, voluntary or other additional certificates are not a recognised means to prove compliance.
EU法の下では、任意の証明書やその他の追加の証明書は、適合性を証明するための認められた手段ではないことに注意してください。
Consequently, they have no value in the case of checks by market surveillance authorities or customs.
そのため、市場監視当局や通関によるチェックの場合、これらの証明書は価値を持ちません。
However, an exception arises in instances where voluntary certification is outlined in specific legislation.
ただし、特定の法律で、任意の認証が明示されている場合は、例外が生じます。
In such cases, while the certificate is not obligatory, it must adhere to explicit requirements if chosen to be acquired.
このような場合、証明書は必須ではありませんが、取得することを選択した場合は、明確な要求に従わなければなりません。
Voluntary certificates can create the impression that the product conforms with applicable EU harmonisation legislation, although such certificates are not issued by an authorised body.
任意の証明書は、製品が適用されるEU整合法に適合しているという印象を与えることがありますが、これらの証明書は認定された機関によって発行されるものではありません。
Voluntary certificates must not be confused with third-party conformity assessment certification by notified bodies within the area for of competence for which they are notified, due to the use of terms such as ‘certification’ or ‘independent third party’ or the presence of the CE marking on the certificate.
任意の証明書は、通知機関による第三者適合性評価認証と混同されるべきではありません。これは、「認証」や「独立した第三者」という用語の使用や、証明書上にCEマーキングが表示されている場合でも、それらが通知されている能力の範囲内でのみ、行われるためです。
CE marking can only be affixed after testing the product and performing the conformity assessment procedure prescribed by the applicable EU harmonisation legislation.
CEマーキングは、適用されるEU法令によって規定された製品テストと適合性評価手続きを実施した後にのみ付けることができます。
It is not acceptable for voluntary certificates to bear a CE marking.
任意の証明書にCEマーキングを付けることは許されません。
5. イーエムテクノロジーのサービス
イーエムテクノロジーでは、欧州CEマーキングに関する様々なコンサルティングサービスを実施しております。
お客様製品にかかる法令/規格の調査、規格適合させるための設計/製造に関するアドバイス、文書類の作成、規格基準に合うように社内基準つくりのお手伝い、評価/試験サービスなど、お客様のご要望に沿うようなコンサルティングサービスをおこなっております。
イーエムテクノロジーの社員一同、お客様の立場に立ち、プロジェクトを進めておりますので、ご相談ごとがございましたら、お気軽にお声がけ下さい。
よろしくお願いいたします。
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【イーエムテクノロジー株式会社 技術部】