3ステップメソッド ステップ2 「安全防護策②」

 

3ステップメソッド 安全防護策 -安全保護装置と制御装置-

 前回コラム「安全防護策①」に引き続き、今回は、安全保護装置(ライトカーテンやスイッチ)とイネーブル装置などの安全制御についてご紹介していきたいと思います。

 

1. 検知保護装置(ライトカーテン、マットスイッチ)とは?

 検知保護装置とは、ライトカーテンやエリアセンサー、圧力検知マットのようなものが挙げられます。

検知保護装置は、人が危険エリアに侵入するか、危険エリア内部にいる人を検出するための検知保護装置であり、主に存在検知やトリップ(機械が自動的に停止する)の為に使用されます。

検知保護装置は、JIS B 9700では以下のように定義しています。

 

検知保護装置(SPE)[sensitive protective equipment (SPE)]

 人又は身体の一部を検出する装置で、検出された人のリスクを低減するために制御システムに対して適切な信号を生成する装置。

[注記] 人若しくは身体の一部があらかじめ定めた限界を超えたとき、例えば、危険区域に侵入したとき[侵入検知(トリップ)]、又は人があらかじめ定められた区域の中で検出されている間(存在検知)、又は両者の場合、信号を生成する。

 

主なものには赤外線を使用して、光の遮光を検知し、トリップさせるようなライトカーテンやレーザスキャナがあります。

これらの検知装置を使用する際には、検出エリアの広さや特性及び位置決めが重要となり、ただ使用すればよいというものでもありません。

特にライトカーテンの場合は、危険可動部の直近にライトカーテンを設置することが多いため、ライトカーテンを遮光してから可動部分が停止するまでの時間に応じ、適切な安全距離を確保することが必要となります。

この内容の詳細はISO 13855(JIS B 9715)に記載されています。

 

2. 安全制御装置(イネーブル、ホールドツーラン、両手押し制御)について

 機械の制御システムの安全関連機能に関する装置(イネーブル装置、ホールドツーラン装置、両手押し制御等)について、まずはそれぞれの定義に触れて行きたいと思います。

 

安全関連機能に関する装置の定義

 各安全関連装置の定義は以下のとおりです。

 

- イネーブル装置(enable device)

 連続的に操作するとき、機械が機能することを許可する起動制御に連携して用いる補足的な手動操作装置。

 

イネーブル装置は、ティーチングペンダントやグリップ型のスイッチに搭載され使用される事が多く、作業者がスイッチを握って押し込む形で使用されます。

また、イネーブル装置を使った制御については、IEC 60204-1 / JIS B 9960-1では、以下のように説明されております。

[イネーブル制御]

イネーブル制御は、次のような手動の制御機能インターロックである。

1. a) イネーブル操作をしている間は、機械の運転が別の起動制御によって可能となり、

2. b) イネーブル操作をしていないときは、

− 停止機能が始動し、

− 機械の運転始動を防止する。

注) 例えば、次のようなインタロックがイネーブル制御に用いられる。

− イネーブル制御装置を操作している間だけイネーブル制御接点がオンになる。

− イネーブル制御接点がオンの状態にあるときだけ機械の運転が可能になる。

 

このように人が意図的にスイッチを操作している時のみ、起動制御を有効(イネーブル)にすることになります。

上述の通り、イネーブルスイッチがオフの状態の場合は、起動制御を行っても、機械は始動しないような設計が必要となります。

 

また、イネーブル装置は、大きく以下のタイプに分けられます。

(1)− 2ポジションタイプ

ポジション 1: スイッチのオフ機能(アクチュエータが操作されない状態)

ポジション 2: イネーブル機能(アクチュエータが操作された状態)

 

(2)− 3ポジションタイプ

ポジション 1: スイッチのオフ機能(アクチュエータが操作されない状態)

ポジション 2: イネーブル機能(アクチュエータがポジション 1 から中間位置まで操作された状態)

ポジション 3: スイッチのオフ機能(アクチュエータが中間点を越えた位置にある状態)

 

ポジション 3 からポジション 2 に戻ったときは、イネーブル機能は作動しません。

現在、一般的なイネーブル装置には、3ポジションのタイプが使用されています。

特に、ロボットの規格等では、3ポジションのイネーブル装置の使用が必ず必要とされていますので、注意が必要です。

仮に、不測の事態が起こった場合に、イネーブル装置を把持している作業者の挙動は2パターン考えられます。

1つめは、スイッチを手放す場合です。

この場合は、2ポジションタイプ、3ポジションタイプ共に接点がオフとなりますので、機械は停止となります。

2つめは、作業者がスイッチを強く握ってしまうといった場合です。

この場合、2ポジションタイプでは機械をオフすることはできませんが、3ポジションタイプの場合、ポジション3はオフ機能となりますので、機械を止めることができます。

このようなことから、イネーブル装置は、3ポジションタイプの方が、より安全であることが言えます。

 

- ホールド・ツゥ・ラン制御装置(hold-to-run control device)

 手動制御器(アクチュエータ)を作動させている間に限り、危険を伴う機械機能の起動開始指令を出し、かつ、維持する制御装置。

ホールドツゥラン制御は、機械の運転のために、制御機器(押しボタン等)を連続的に押し続けることが必要となる制御装置になります。

 

 

- 両手操作制御装置(two-hand control device)

 その装置を操作する人のためだけの保護手段となるものであり、危険な機械機能の起動開始指令を出し、かつ、維持するために、両手による同時操作を少なくとも必要とする制御装置。

 

両手操作制御装置は、機械始動時に作業者が制御装置を両手で操作することで、両手が使えない状態を意図的に作ることで、危険源へのアクセスを防止するために使用される制御装置です。

 

両手操作制御装置は、以下の3つのタイプに分けられます。

タイプⅠ:次による。

− 両手によって並行操作する2個の制御機器からなる。

− 危険状態にある間、並行した連続操作を必要とする。

− 危険状態がまだ存続しているとき、一方又は両方の制御機器から手を離すことによって機械の運転が停止しなければならない。タイプⅠの両手操作制御機器は,危険な運転の起動には適切であるとは考えられない。

タイプⅡ:両方の制御機器から一度手を離した後でなければ機械の再起動ができないタイプⅠの制御。

タイプⅢ:次のような制御機器の並行操作を必要とするタイプⅡの制御。

− 二つの制御機器を各々に決められた時間内に操作しなければならない。

その時間は、0.5秒を超えてはならない。

− この決められた時間が超過した場合,両方の制御機器から一度手を離さなければ再起動できない。

 

一般に危険な機械(プレス等)に使用される両手操作制御装置は、タイプⅢの使用が要求されます。

両手操作制御装置の使用において、最も注意しなければならない点は、両手を使わず使用されないようにすることです。

たとえ、スイッチが2つであっても、片手で2つのスイッチを押せてしまう、あるいは、片方の手と肘でスイッチを操作できるといったように、簡単に無効化できないかどうか、という視点で注意を払う必要があります。

 

このようなことを防止するために、2つにスイッチに対して、適切な距離や必要に応じて、仕切り等を設ける必要があります。

この詳細は、ISO 13851(JIS B 9712)に記載されております。

続きは、次回コラム「3ステップメソッド ステップ2 付加保護方策」でお伝えしたいと思います。

 

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2019年06月14日