ISO12100 リスクアセスメント
*この記事は、2023年10月05日に書かれた記事です。
ISO12100は、機械類の安全性として、リスクアセスメント及びリスク低減について定めた国際規格です。
日本においても、ISO12100を基にJIS規格で採用されております。(JIS B 9700)
ISO12100は、世界各国でもベースとなる規格として、自国の国家規格として広く採用されております。
欧州の場合は、EN ISOが頭について「EN ISO 12100」、アメリカの場合はANSIより「ANSI/ISO 12100」が発行されております。
このように、ISO12100を踏襲して自国で定めた規格になりますが、内容はISO12100から変更されることなく採用されているのがほとんどです。
今回は、ISO12100の概要について取り上げたいと思います。
<コンテンツ一覧>
- 1. 現行のISO12100について
- 2. ISO12100の概要
- ▶ 2-1. ISO12100の構成
- ▶ 2-2. リスクアセスメントの実施
- ▶ 2-3. リスク低減について
- 3. イーエムテクノロジーのサービス
1. 現行のISO12100について
当初、ISO12100は、ISO/TR 12100-1、及びISO/TR 12100-2として1992年に発行されておりました。
現行は、ISO12100という規格ですが、前身は、ISO/TRであり、さらに、-1、-2という2部構成であったということです。
-1と-2が統合され、現行ISO12100に至っております。
現行版は、ISO12100(2010)が最新版になります。
2010年に発行されておりますので、かなり時間が経っておりますが、本規格の見直しは5年毎に行われております。
2. ISO12100の概要
冒頭でも触れましたが、ISO12100は、機械安全を製品に適用するための規格であり、人に対する危害のリスクについて、製品設計を行うために用いられる規格です。
1項の適用範囲にも記載されておりますが、本規格では、飼育動物、財産または環境に対するリスク、損害については取り扱わないと記載されております。
安全な機械を設計/製造するために、どのようなリスクがあり、どのようにリスク低減を行うべきか?についての原則や方法論を規定しています。
また、ISO12100は、機械ユーザーを直接の対象者としておりませんので、どのように使用すれば安全な運用ができるのか?などの労働安全的な側面には触れられておりません。
ISO12100は、機械安全規格体系のAタイプ規格の最重要規格として位置付けられており、この規格を基に製品設計に安全性の側面を適用する目的で使用されます。
2-1. ISO12100の構成
ISO12100は、1項「適用範囲」から始まり、7項「リスクアセスメント及びリスク低減の文書化」、付属書A、B、Cで構成されております。
項目番号 | 表題 |
---|---|
1 | 適用範囲 Scope |
2 | 引用規格 Normative references |
3 | 用語及び定義 Terms and definitions |
4 | リスクアセスメント及びリスク低減のための方法論 Strategy for risk assessment and risk reduction |
5 | リスクアセスメント Risk assessment |
6 | リスク低減 Risk reduction |
7 | リスクアセスメント及びリスク低減の文書化 Documentation of risk assessment and risk reduction |
付属書A | 機械の構成図 Schematic representation of a machine |
付属書B | 危険源,危険状態及び危険事象の例 Examples of hazards, hazardous situations and hazardous events |
付属書C | 索引 Trilingual lookup and index of specific terms and expressions used in ISO 12100 |
本規格を製品に適用し、適切なリスクアセスメント、リスク低減を行い、製品設計/製造に、適切かつ具体的なレベルに落とし込むことができなければなりません。
この規格は、機械安全設計の基本概念になることから、ただ単に読んだだけでは、理解することは難しく、独学で行う場合は、かなりの時間、労力が必要になるかと思います。
ISO12100から、様々なBタイプ規格、Cタイプ規格を参照しなければならないことからも、リスクアセスメントだけでなく、ガードやインターロックなどの関連規格にも精通した深い見識、ノウハウが必要になってきます。
2-2. リスクアセスメントの実施
ISO12100で規定されたリスクアセスメント(Risk assessment)とは、「リスク分析及びリスク評価を含む全てのプロセス」と定義されております。
ここで出てくる「リスク分析 (Risk analysis)」と「リスク評価 (Risk evaluation)」の定義についても、触れておきたいと思います。
リスク分析とは、「機械の制限に関する仕様、危険源の同定及びリスク見積もりの組み合わせ」と定義され、リスク評価とは、「リスク分析に基づき、リスク低減目標を達成したかどうかを判断すること」と定義されております。
リスクアセスメントとは、「リスクアセスメント=リスク分析+リスク評価」というように、リスクを分析し、そのリスクを評価することを指しています。
そして、これらのプロセス、決定事項は、リスクアセスメントシートに記載されなければならないとされておりますので、文書化しなければなりません。
2-3. リスク低減について
リスクアセスメントを行い、リスク低減を行う上で、おさえておきたいポイントになるのが、リスク低減の考え方です。
本規格にも記載されておりますが、リスク低減の方法として、3ステップメソッドが使われます。
3ステップメソッドとは、ステップ1、2、3と優先順位に従ってリスク低減を行っていくアプローチのことです。
ステップ1「本質的安全設計方策」では、製品設計においてリスク低減を考え、ステップ2「安全防護及び付加保護方策」では、ガードなどの保護になります。
残留リスクがある場合、ステップ3「使用上の情報」として、取扱説明書でユーザーに注意喚起を促すことになります。
製造者側でできるリスク対策はここまでになり、あとはユーザー側に委ねることになります。
ユーザー側で、適切なリスク低減を行えるように取扱説明書に記載することが必要になりますが、どこまでを製造者側で対応しなければならないのか?について、悩まれることが多いかと思います。
これ以外にも様々な問題が出てくると思いますので、リスクアセスメントやリスク低減の知見、ノウハウ、対応事例などを含め、適切な落としどころを決められるように、当社サービスもご活用頂ければと思います。
3. イーエムテクノロジーのサービス
イーエムテクノロジーでは、ISO12100に対応した技術コンサルティングサービスを行っております。
本規格の解説、リスクアセスメントの説明、リスク低減の考え方、その他関連規格の適用、リスクアセスメントシートの作成などについてもお客様のご要望に合わせて対応致します。
また、リスクアセスメントだけでなく、欧州規格に適合するためのプリチェック(事前構造評価、EMC実力試験)、CEマーキング適合性評価、電気試験、EMC試験、各種レポートの作成、取扱説明書の作成、TCF作成など、CEマーキングを行うための一連の技術サービスを取り揃えております。
お客様の製品、状況、ご要望に応じて最適なご提案をさせて頂きますので、お気軽にご相談下さい。
関連ページ「機械指令(2006/42/EC)--機械安全--」