IEC,EN 60204-1 機械類の安全性(機械に適用される電気安全)
*この記事は、2022年12月07日に書かれた記事です。
IEC60204-1またはEN60204-1という規格は、機械指令が適用される製品に適用されることが多い機械製品の電気安全について、定めている電気安全規格です。
今回は、IECまたはEN60204-1(以下、60204-1とします。)について、本規格の概要をご紹介致します。
<コンテンツ一覧>
1. IEC,EN 60204-1の目的
60204-1規格は、機械に組み込まれた電気機器に関する電気安全を定めています。
本規格の序文では、次の3つの点について、機械製品に対する電気安全の実現を目的としています。
- ・人及び財産の安全
- ・制御応答の一貫性
- ・操作及び保守の容易性
人及び財産の安全について
機械製品と言っても、メカ部品を組み合わせて人力で駆動するような機械製品もありますが、自動化された生産設備などの機械製品では、電気制御が組み込まれています。
本規格は、タイトルからもわかるとおり、機械製品に電気機器が搭載されている、組込まれていることが前提の電気安全規格です。
電気による安全と言っても様々な安全性が取り上げられています。
人に対しての安全性で言えば、感電です。
財産に対する安全性で言うと、電気による火災が挙げられます。
本規格では、感電に対する保護について、例えば直接または間接的に人が活電部に触れて感電することがないように、絶縁物による保護、接地接続の規定、ケーブル、配線、ダクトなど細かく規定されています。
制御応答の一貫性
電気制御による安全性として、例えば電気信号で停止させるといった安全回路の構築についても本規格でも取り扱われています。
スタート(始動)、ストップ(停止及び一時停止)、非常停止や非常遮断など、機械を電気制御するために必要な電気安全について定められています。
また、ホールドトゥラン制御、両手制御、イネーブル制御などの操作手段とその制御応答についても定められており、電気制御による人や財産を守るために必要な要求事項があります。
操作及び保守の容易性
そして、人間工学的なことも定められており、電気制御の操作性、ボタン類の配置、視認性、明確さなどのオペレーターの作業性、簡単にアクセスできるかどうかといったメンテナンス性についても要求があります。
これらの視点から構築された電気安全規格を満足することで、電気制御を持つ機械製品の安全性を確保していることになります。
そして、60204-1ではこのような電気構造の要求だけでなく、電気試験についても要求されておりますので、設計/製造の観点から安全性について証明しなければならないことになっております。
2. IEC,EN 60204-1規格の構成について
本規格は、約130ページで、以下の1項から18項、付属書Aから付属書Iまでの構成になっております。
項目番号 | タイトル |
---|---|
1. | 適用範囲 |
2. | 引用規格 |
3. | 用語、略語の定義 |
4. | 一般要求事項 |
5. | 外部電源導体の端末処理及び断路・断路装置 |
6. | 電撃に対する保護 |
7. | 機器の保護 |
8. | 等電位ボンディング |
9. | 制御回路及び制御機能 |
10. | オペレーター・インターフェース及び機械搭載型制御装置 |
11. | 制御装置:配置、取付け及びハウジング |
12. | 導体及びケーブル |
13. | 配線方法 |
14. | 電動モーター及び関連機器 |
15. | コンセント及び照明 |
16. | マーキング、警告標識及び略号 |
17. | 技術文書の作成 |
18. | 検証 |
付属書A. | 電源の自動断路による感電保護 |
付属書B. | 機械の電気機器に関する質問書様式 |
付属書C. | 60204-1の対象となる機械の例 |
付属書D. | 機械の電気機器の導体及びケーブルの電流容量及び過電流保護 |
付属書E. | 非常操作機能の説明 |
付属書F. | 60204-1の使用の手引き |
付属書G. | 代表的な導体断面積の比較 |
付属書H. | 電磁影響の作用を低減する措置 |
付属書I. | 文書類/情報 |
- | 参考文献 |
各項目には、様々な数多くの要求があり、その要求ができた背景や要求事項に対するその意図まで読み解くことが求められます。
これらの要求事項に対し、様々な機械評価を行ってきた豊富な経験、解釈に基づき、評価されます。
大きく大別すると、本規格60204-1は、「規格要求に対する評価」と、「実機に対する試験」に分けられています。
電気機器の正しい取扱いやケーブル配線等の構造がきちんとできているかどうか、という構造面の要求と、機械に組み込まれた電気機器に対して電気試験を行う試験面の要求があり、製品がこれらの要求に対して適合できるかどうかを確認しなければなりません。
3. イーエムテクノロジーの適合支援サービス
イーエムテクノロジーでは、60204-1の電気構造はもちろん、試験の実施、レポート作成まで一貫して技術サービスを行っております。
お客様のご要望に応えられるように、設計/製造段階から、様々なサポートをさせて頂いております。
イーエムテクノロジーのサービスの特長は、複数エンジニアが絡み、高品質な技術サービスを提供できることです。
イーエムテクノロジーには、複数の機械エンジニアが社員として在籍しています。
多くのコンサルティング会社がありますが、自社にエンジニアが在籍していない仲介業者や1人親方といった個人コンサルタントも多く存在する中、当社には複数人のエンジニアが在籍しております。
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また、エンジニアの力量差を埋めるべく、規格原文の勉強会の実施やチェックリストの作成・運用を行っております。
日々、お客様に満足して頂けるように、高品質な技術コンサルティングの提供について深く追求しております。
ご相談ごとがございましたら、お気軽にお声がけください。
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