EN60204-1:2018 規格改訂について
機械指令(2006/42/EC)や、低電圧指令(2014/35/EU)で適用される「機械の電気機器安全規格であるEN60204-1」の規格改訂についてご紹介していきたいと思います。
IEC60204-1:2016(Ed.6)が発行され、IEC規格を踏襲してEN60204-1:2018が発行されております。
そして、現在は、旧版となるEN60204-1:2006+A1:2009からEN60204-1:2018への移行期間となっております。
EN60204-1:2018への移行期間
機械類の安全性「機械の電気機器」について定められたこの規格は、機械指令や低電圧指令の適用規格として、よく用いられている電気安全規格です。
・EN60204-1
Safety of machinery - Electrical equipment of machines - Part 1: General requirements
(機械類の安全性−機械の電気装置−第 1 部:一般要求事項)
EN60204-1:2018は、IEC60204-1:2016を基に制定され、発行されました。
そして、機械指令や低電圧指令の整合規格として用いられている本規格の改訂対応については次のとおりとなっています。
機械指令(2006/42/EC)では、EN60204-1:2006+A1:2009は2021年10月2日をもって失効しますので、これ以降は2018年版への切り替えが必要となります。
低電圧指令(2014/35/EU)では、2021年5月27日をもって、2018年版に切り替えが必要となります。
EN60204-1:2006+A1:2009が有効である期間 | EN60204-1:2018だけが有効となる日 (この日以降は2006+A1:2009は無効) | |
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低電圧指令(2014/35/EU) | 2021年5月27日まで | 2021年5月28日以降は2018年版のみ有効 |
機械指令(2006/42/EC) | 2021年10月2日まで | 2021年10月3日以降は2018年版のみ有効 |
本規格を適用したCEマーキング製品を有効期限以降も出荷される場合は、規格のアップデート評価を行う必要があります。
(規格の格上げ対応が必要となります。)
EN60204-1:2006+A1:2009 (旧版)からの変更点
規格の冒頭にある「まえがき(FOREWORD)」には、旧版からの重要な変更点が記載されております。
また、IEC規格とEN規格の違いについては、付録「Z」として記載されています。
旧版から改訂された変更については、以下のとおりです。
(a) 可変速駆動システム(PDS)に関する用途を扱うための要求事項の追加
PDS(Power Drive System可変速駆動システム)は、サーボアンプ等の部品が当てはまり、部品の安全規格として、EN 61800シリーズが存在しています。
この61800シリーズは、電気的、熱的及びエネルギーの安全要求事項を取り扱う61800-5-1や、機能(制御)安全を取り扱う61800-5-2、PDSのEMC(電磁両立性)に関する要求事項を取り扱う61800-3等が発行されています。
(b) 電磁両立性(EMC)に関する要求事項の改訂
旧版でもEMCに対する要求記載がありますが、機械に使用される組込まれた機器/構成品は、関連するEMC規格に適合していなければなりません。
(c) 過電流保護に関する要求事項の明確化
旧版に比べ、より要求事項が分かりやすくなり、具体的な内容が追加されています。
(d) 電気機器の短絡電流定格(SCCR)の決定に関する要求事項
SCCR(Short Circuit Current Rating)とは、規定の条件下で短絡保護装置(Short Current Protective Devices)の全動作時間の問に電気機器によって耐えることができる予測短絡電流の値を指します。
短絡電流定格については、旧版でも電気銘板に記載する項目の一つとして規定がありましたが、2018年版では、より具体的な短絡電流定格の算出方法が規定され、銘板への値を記載することはなく、技術文書上に記載することに変更されました。
(e) 保護ボンディングの要求事項及び用語の改訂
第8項(保護ボンディング)の要求事項について、一部内容が変更(項目の削除等)となっています。
(f) 可変速駆動システム(PDS)のセーフティトルクオフ(STO)、非常停止及び制御回路の保護に関連する要求事項を含む、第9項(制御関連の項目)の再構成及び改訂
第9項は「制御回路及び制御機能」に関する規定があり、再構成及び改訂されました。
(g) 制御装置のアクチュエータのシンボルの改訂
機械操作に関する図記号が追加されています。
(h) 技術文書に関する要求事項の改訂
旧版では、各種マニュアルや回路図、パーツリスト等、それぞれの技術文書に対して小項目に分け、要求事項が記載されていましたが、2018年版では、必要となる全ての内容は、1つの項目に統合され、非常に分かりやすい内容となりました。
また、旧版より追加となっている項目がありますので、注意が必要です。
(i) 現行の国別の特別な条件、基準規格及び引用参考文献の更新
引用規格や参照規格の規格番号や年度が見直されています。
このように、2018年版では、多くの改訂箇所があります。
旧版規格で、CEマーキング対応を行い、そのままになっている場合は規格の改訂評価を行わなければなりませんので、規格改訂評価、及びTCFの格上げ作業が必要となります。
イーエムテクノロジーでは、2018年版への見直し評価/試験サービスについても、対応しておりますので、お気軽にご相談頂ければと思います。
規格格上げ対応には、ある程度の期間を要することがありますので、早めに対応していくご準備の方をおすすめ致します。
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