欧州(EU)に新工場(生産ライン)を建てる時のCEマーキング対応設計
欧州(EU)向けに、新工場を建てる、複数の産業機械で構築された自動車の生産ライン、製造ラインを新設する、または既設からの置き換え、日本から移設する場合のCEマーキング対応について、ご紹介致します。
複数の機械で構築された製造ラインを欧州に輸出される場合は、CEマーキング制度に適合させておかなければなりません。
機械指令の適用を受ける機械製品の製造者は、生産現場で働く労働者などの人に加わる危害や設計上の欠点による事故が発生した場合の経済的な損害、環境問題につながるリスクについて、人の健康や安全性を保証する責任を持つことが記載されています。
自社の子会社に設備を輸出するだけなので、CEマークは必要ないと考えているが、本当に必要なのか?というご質問を頂くことが多いのですが、結論から申しますと、CEマーキングへの適合が必須となります。
日本向けに設計された機械とCEマーキング適合している機械では、そもそも安全に対する考え方が違うため、日本仕様の機械をそのまま移設することはできません。
それが原因で事故につながった場合、CEマーキングの適合性について製造者の設計の考慮が十分であったかどうかが、裁判の論点として取り上げられるでしょう。
また、企業が法令違反、コンプライアンス問題を起こすと、その経済的な影響は深刻な事態を招くおそれがありますので、法令を遵守しておかなければなりません。
個々の機械でCEマーキング適合している製品を組み合わせる場合は要注意
例えば、つぎのような3つの設備を組み合わせて製造ラインを構築しているとします。
(1) 組み立てロボットシステムの部分は、機械指令とEMC指令に適合している
(2) 検査装置は低電圧指令とEMC指令に適合している
(3) 搬送機械は機械指令の組込み宣言を行っている
このように個々の機械でCEマーキング適合を行っていたとしても、これらの装置を組み合わせた最終製品では、適用している指令が違う、搬送機械は機械指令の組込み宣言であり、CEマーク適合性については最終製品にゆだねているといった問題があり、これらを一つの生産ラインとして最終製品として考えると、安全性について不足する部分が出てきます。
例えば、非常停止ボタンですが、ロボット側で人がはさまれる事故が起きた時、検査装置のそばにいたオペレーターが近くの非常停止ボタンを押したがロボットは止まらず、重大事故につながってしまったというケースも考えられます。
ドアインターロックスイッチが作動して動力を停止させる場合、どの機械の範囲で連動して停止させるのか?
安全回路に使用されるセーフティ部品の信頼性や、安全回路の構築が適切であるのか?
オペレーターが携わるタスクゾーンはどの範囲なのか?など、生産ライン全体を最終製品として評価を行わなければ、安全性に問題があり、不適合となってしまいます。
このように、ライン設備全体でCEマーキング適合するために、製造者、システムインテグレーターが考えなければならないことがたくさんあります。
生産ラインの安全規格 (統合生産システム ISO 11161)
最終製品の生産ラインの安全を扱う規格では、ISO 11161 (統合生産システム IMS : Integrated Manufacturing System)という規格があります。
ISO 11161では、工程やタスク、アクセス経路等を分析し、人や機械の介在範囲の決定、機械同士のつなぎ目に潜在するリスクアセスメントを行うための規格です。
また、自動化された製造ラインで、安全性を電子・電気・プロラマブル機器に頼る場合は、IEC 60508の機能安全も考慮しなければなりません。
当社では、生産ラインのCEマーキング対応について、設計段階はもちろん、最終評価についても適合するための業務に対応しております。
統合生産システムISO 11161や機能安全 IEC60508シリーズ等についても、行っておりますので、お気軽にご相談下さい。