EMC指令(2014/30/EU)の対象となる機器

EMC指令(2014/30/EU)の対象機器

 

 CEマーキングを行っていくにあたり、ほとんどの電子機器はEMC指令の対象となりますが、どのような製品がEMC指令(2014/30/EU)の対象になるのか?現行のEMC指令(2014/30/EU)に沿って解説していきたいと思います。

 

まず、EMC指令の対象となるかどうかについては、EMC指令(2014/30/EU)原文の第2条「適用範囲」に基づき、確認していくことになります。

 

第2条「適用範囲」 EMC指令が適用される機器について

 まずは、EMC指令の対象となる機器についてですが、原文の第2条では以下のように記載されております。

 

1. 本指令は、第3条に定義する「機器(Equipment)」に適用する。

 

この第2条に掲げられているように、EMC指令(2014/30/EU)の対象となる製品とは、第3条に定義されている「機器」に該当する場合が適用対象となってきます。

 

EMC指令の第3条「定義」では、指令の対象となる製品を「機器(Equipment)」と呼んでおります。

この機器とは、あらゆる「装置(Apparatus)」、または「固定設備(Fixed Installation)」のことを指しております。

EMC指令における「機器」とは、「装置」と「固定設備」をまとめて表す言葉となっております。

EMC指令を理解する上で、この「機器」と「装置」と「固定設備」という言葉に注意しながら読むことで理解を深めることができると思います。

それでは、順番に見ていきましょう。

 

 

まず、「装置(Apparatus)」についてですが、「装置(Apparatus)」とは、エンドユーザー向けに市場流通する単一機能を有するユニットであり、電磁妨害の発生、または電磁妨害による影響を受けやすい完成品、またはそれら完成品の組合せを指します。

 

また、次の場合も装置としてみなされます。(第3条2項を参照して下さい。)

・エンドユーザーにより、装置に組み込まれることを意図したコンポーネント、サブアッセンブリー

・ある範囲内の場所で移動して、操作することを意図した他の装置との組み合わせとして定義される移動可能設備

 

次に、「固定設備(Fixed Installation)」とは、所定の場所において、組立て、設置、恒久的な使用を意図しており、複数の装置、及びその他デバイスの特定の組合せを指します。

 

この「装置」と「固定設備」に該当する製品は、EMC指令の適用対象となります。

適用対象となる機器は非常に多く、家庭用、情報機器、産業機器などのほとんどの製品に適用されることになります。

 

固定設備については、下記コラムをご覧ください。

 

関連コラム「固定設備のEMC試験について(1)」

 

関連コラム「固定設備のEMC試験について(2)」

 

それでは、装置(Apparatus)について説明していきます。

 

「装置(Apparatus)」は、下図のように「完成品」、「完成品の組合せ」、「コンポーネント、サブアッセンブリー」、「移動可能設備」というように区別されております。

 

 

完成品とは?

 欧州EMC指令ガイドの第1.5.1項には「完成品とは、製品自身が筐体を持ち、機能を備えたあらゆるデバイス、ユニットをいう」としています。

完成品は、エンドユーザー向けを対象としており、EMC指令の機器と見なされるため、指令の該当するすべての規定を満たす必要があります。

完成品である製品が市場で入手可能になる場合、EMC指令の要求事項を満たす必要があります。

 

完成品の組合せとは?

 欧州EMC指令ガイド1.5.2項では、完成品の組合せについて説明されております。

EMC指令の下では、完成品の組み合わせとして、以下の場合に装置と見なされることになります。

 

・経済事業者(製造業者、認定代理人、輸入業者、供給業者)によって、単一機能を持つユニットとして利用可能にされる。

・エンドユーザーが特定のタスクを実行するために、一緒に操作されることを意図している。

・電磁妨害を発生する、または電磁妨害の影響を受けるおそれがある。

EMC指令において、このような完成品の組み合わせは、単一の装置とされ、EMC指令のすべての規定が適用されます。(CEマーキングの要求、連絡先の詳細などを含む)

 

2つ以上のCEマークの付いた完成品を組み合わせたとしても、自動的に「適合」とはなりません。

例えば、CEマークの付いたPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と、モータドライバーの組み合わせは、必須要求事項を満たさないことがあります。

これらの最終製品のいずれかがEMC指令から除外され、他のEU法(無線指令など)の対象となる場合は、その特定の最終製品が市場に出されたときにその他のEU法に準拠するものとします。

その製品をはじめて利用可能にする製造業者の義務になります。

 

コンポーネント/サブアッセンブリーとは?

 欧州EMC指令ガイド1.5.3項では、コンポーネント/サブアッセンブリーについて説明されております。

コンポーネント/サブアッセンブリーとは、一般的に、組込み用途の製品であり、最終用途向けの適切な筐体を持たないものになります。

多くの場合、別装置に組込まれ、機能追加を意図している製品というものになります。

 

次の2つに該当する場合は、EMC指令の対象となります。

 (a) エンドユーザーによる装置への組込を意図している。

 (b) 電磁妨害を発生する、または電磁妨害の影響を受けるおそれがある。

 

また、コンポーネント/サブアッセンブリーに添付する取扱説明書には、EMCの意味を知らないエンドユーザーが調整または接続を行うことを考慮し、全ての関連情報(注意事項)を含めるべきであるとされています。

 

<コンポーネント/サブアッセンブリーの例>

・コンピューター用のプラグインカード

・PLC(プログラマブルロジックコントローラー)

・電動モーター[誘導モーター(本質的に無害な誘導電動機は除く)]

・HDD(ハードディスクドライブ)

・USBメモリースティック、SDカード

・独立型の電源ユニット、またはエンドユーザーによって組込まれる別売品

・電子温度調節器

 

これらのコンポーネント/サブアッセンブリーは、機器と同等であると考えられ、装置に適用されるEMC指令の基本的要求事項に適合する必要があります。

 

移動可能設備とは?

欧州EMC指令ガイド第1.5.4項では、移動可能設備について説明されています。

ある範囲の場所で移動および操作されることを意図した装置(および該当する場合には他の装置)の組み合わせとして定義されるモバイル設備(例えば、モバイルLEDビデオウォール)は装置であるとみなされ、EMC指令が適用されます。

 

上記に挙げた「機器」に該当するものは、EMC指令の要求を満たす必要があります。

 

次に、EMC指令の適用除外となる機器についてご説明していきます。

 

第2条「適用範囲」 EMC指令の適用除外となる機器について

 EMC指令の適用除外となる機器については、以下のとおり記載されており、これらに該当する場合は適用除外となるため、EMC指令は適用されません。

 

原文の第2条には以下のように記載されています。

 

2. 本指令は、以下に該当する場合は適用除外とする。

 

・RE指令(2014/53/EU)の適用対象となる機器

EMC指令原文では、R&TTE指令(1999/5/EC)となっておりますが、現在、R&TTE指令はすでに廃止され、RE指令(2014/53/EU)に置き換えられております。

 

・規則(EC) No.216/2008の対象となる航空用製品

 

・国際電気通信連合(ITU)の無線通信規則のもとで、アマチュア無線家が使用する市場流通しない無線機器

 

・他の機器への電磁干渉を生じない、または電磁妨害を受けない本質的に無害なもの

配線、制御装置やサーモスタットなどを含まない抵抗負荷だけで構成された単純なヒーター、電池、スピーカーなどの本質的に無害である電磁的受動部品が挙げられます。

 

・ 特注の専門家用評価キットで、研究開発用途のみに使用されるもの

 

3. その他の指令により、本EMC指令の付属書Ⅰに掲げる基本的要求事項の全体、または一部をカバーするように具体的に策定されている場合、本指令は適用しません。

例えば、医療機器指令(93/42/EEC)やRE指令(2014/53/EU)では、EMC指令の基本的要求事項を含んでいるため、EMC指令としては適用対象外となりますが、RE指令などの特定指令にはEMC要求があるため、間接的に関係してきます。

 

4. 本指令は、機器の安全性を規制するEU法令または国内法令の適用に影響を与えるものではありません。

 

本質的に無害な機器とは?

 

欧州EMC指令ガイドの1.4.4項には、EMCの観点から本質的に無害な機器は除外されることに対する説明が下記のように記載されています。

 

装置の固有の物理的特性が次のようなものである場合、その装置は電磁適合性に関して本質的に良性と見なされます。

 

(a)無線及び電気通信機器、その他の機器の意図した動作状態を妨げるような電磁放射を発生しない。

 

(b)意図された環境下において、通常存在する電磁妨害に曝されても許容できないほどの性能劣化なしに動作する。

 

機器が本質的に良性であると分類するには、両方の条件を満たす必要があります。

 

わかりやすく言うと、他の機器に影響を与えるレベルの電磁放射を与えず、また、使用環境下における電磁妨害に曝されても正常に動作するという機器ということになります。

つまり、十分なエミッション性能とイミュニティ耐性の両方を備えた機器のことです。

 

上記の適用により、以下の製品はEMC指令から適用除外とすることができます。

ただし、これらには電源を必要とするようなアクティブな電子部品は含まれません。

これらに該当する場合、評価結果とその根拠を文書化する必要があります。

 

- ケーブルとケーブルの接続、ケーブルの付属品

- 自動スイッチング装置を使用せずに抵抗負荷のみを含む機器

 例えば、サーモスタットやファンの制御を持たないシンプルな家庭用ヒーター

- 電池と蓄電池(アクティブな電子回路を持たないもの)

- アクティブな電子部品を持たないコード付きヘッドフォン、アンプなしのスピーカー、ギターの誘導センサー

- アクティブな電子回路を持たないポケットランプ(LED付きのものを含む)

- 電子回路を持たないインダクションモーター

- クォーツ時計(ラジオ受信機などの追加機能なし)

- アクティブな電子部品を含まない住宅用およびビル用のスイッチ

- パッシブアンテナ

- アクティブな電子部品を持たない電磁リレー

- アクティブな電子部品を持たない電磁ロック

- ブラウン管

- 回路内の短絡故障や異常状態の遮断のために、一時的に極短時間の妨害波しか発生せず、電磁的に能動部品を含まない保護機器(ヒューズ、電磁的に能動電子部品を含んでいない回路遮断器)

- 経年劣化により、部分的な絶縁不良の結果、妨害波の発生原因となるような高圧装置(電磁的に能動電子部品を含まない高圧インダクタ、高圧変圧器)

 

このようにEMC指令に該当するのかどうかはEMC指令の適用範囲に基づき判断していくことになります。

CEマーキング対応でお困りごとがございましたら、お気軽にご相談頂ければと思います。

 

 

 

2019年03月15日