固定設備のEMC試験について(1)

EMC指令における固定設備とは?

欧州の自社工場を建てるため、製造ラインの設備一式を日本から輸出するといった場合でも、EMC指令の対象になるのか?というお問合せを頂くことがございます。

このようなケースは、EMC指令の「固定設備」というものに該当するかもしれません。

固定設備は、EMC指令の対象外になるから何もしなくていいと、勘違いされることもあるようですが、EMC指令の対象外になることはありませんので、ご注意下さい。

EMC指令における固定設備は、EMC指令の対象であり、適切な技術対応(Good Engineering Practice)を行い、指令要求を満たさなければなりません。

今回は、EMC指令における「固定設備」への要求がどのようなものか、を解説していきたいと思います。

 

EMC指令で定義される固定設備とは?

EMC指令(2014/30/EU)の第2条「適用範囲」には、第3条に定義される「装置」と「固定設備」に関して、付属書Ⅰにある「基本要求事項」を定めています。

まず、EMC指令を理解する上で、第3条の言葉の定義を理解しておくと、わかりやすいと思います。

EMC指令の第3条「定義」では、指令の対象となる製品を“機器”と呼んでおります。

この機器とは、あらゆる“装置(Apparatus)”、または“固定設備(Fixed Installation)”を言います。

 

 

「固定設備(Fixed Installation)とは、所定の場所において、組立て、設置、恒久的な使用を意図しており、複数の装置、及びその他デバイスの特定の組合せをいう」と記載されています。

固定設備は、設置場所で組立てられる大型機器で、恒久的にその場所で使用されるものということになります。

現場で組立て・設置、その場での恒久使用を意図しているため、EU域内の自由流通の対象とはなりません。

そのため、固定設備はCEマーキングの要求事項の対象にも、EU適合宣言の対象にもなりません。

しかしながら、EMC指令の付属書Ⅰ「基本的要求事項」に適合する必要があります。

故に、通常、装置に対して要求されるCEマークの表示や適合宣言の手続き等は不要ですが、EMC指令の固定設備に関する要求事項の対象となります。

 

固定設備の例

固定設備の例としては以下のようなものが該当します。(EMC指令ガイドより抜粋)

工業プラント、電力プラント、電力供給網、電気通信ネットワーク、ケーブルTVネットワーク、コンピューターネットワーク、空港荷物搬送システム、空港滑走路の照明設備、自動倉庫搬送システム、屋内アイススケート場機械設備、雷サージ保護設備(制御室を含む)、風力発電所、自動車組立てプラント、給水ポンプ所、水処理プラント、鉄道インフラ、空調設備

 

固定設備に対する指令要求について

EMC指令の付属書Ⅰ「基本要求事項」第2項には、固定設備に対する特別要求事項が定められています。

その内容は、「第1項に掲げる基本要求事項を満たすようにGood Engineering Practice“適切な技術対応”(以下、GEPといいます。)を用い、固定設備の構成部品の使用に関する情報を考慮して設置するものとする。」と定められています。

固定設備は、適切な技術対応”GEP”を用いて、第1項の基本要求事項を満たす必要があります。

付属書Ⅰ「基本要求事項」第1項には、EMC指令の一般要求事項が記載されており、下記のとおりです。

 

EMC指令の基本要求事項

機器は、最先端技術を考慮して次のことを確実にするように設計・製造されなければならない。

1. 機器から発生する電磁妨害波は、無線機器、電気通信機器又は、その他の機器の意図された動作ができなくなるレベルを超えないこと。

2. 機器は、意図された使用の際に予期される電磁妨害波に対して、許容できない劣化を生じることなく動作できるイミュニティ(電磁妨害耐性)レベルを有すること。

 

EMCとは、エミッション(電磁妨害を制限)とイミュニティ(電磁ノイズの耐性)の両面を規制すること意味しており、電磁両立性といいます。

「a.」では機器自ら発生するノイズ量を制限するエミッションを指し、「b.」では機器が外部からノイズを受けても誤動作しないようにノイズ耐性を持つイミュニティを指しております。

以上のことから、固定設備に対してもEMC(電磁両立性)を考慮する必要があります。

 

 

「適切な技術対応」を用いて指令要求(エミッション、イミュニティ)を満たす必要がある。

 

EMC指令における機器の適合性とは

EMC指令では、その機器が指令要求に適合していることを証明しなければなりませんが、EMC指令の基本要求事項は非常に抽象的に記載されているため、完全に適合性を証明することは難しいものになります。

第3章「機器の適合性」第13条「機器の適合性の推定」は下記のとおり記載されています。

 

「欧州官報(Official Journal of the European Union)」に公表された整合規格に適合している機器または部分的に適合している機器については、これらの規格又は部分的に使用した規格が、付属書Ⅰの基本的要求事項に適合していると推定されるものとする。

 

このように機器に対して整合規格を完全に使用した場合、または部分的に整合規格を使用した場合、その適用範疇で基本要求事項を満たしていると推定できるということになっております。

完全な適合証明はできませんが、整合規格を使用した部分については適合するものと推定できるということです。

次回へ続く。

 

生産ライン設備のCEマーキングをお考えのお客様へ

EMC指令の固定設備に該当するかどうか?もし、該当する場合の適切な技術対応GEPとは具体的に何を行えばよいのかわからない等のお悩みを抱えたお客様、是非一度当社へご相談下さい。

 

 

 

 

2018年10月25日