部分的に完成した機械(半完成品)のCEマーキング(2)

 

「部分的に完成した機械」の解釈

 機械指令の中で扱われる「部分的に完成した機械(Partly Completed Machinery = PCM)」について、どのようなものが部分的に完成した機械に当たるのか、その意味を探っていきたいと思います。

 

「部分的に完成した機械」

 自社製品が、機械指令(2006/42/EC)で扱われる「部分的に完成した機械」に該当するのかどうか、お困りになることがあるかと思います。

ここでは、その解釈の参考になるように、機械指令で扱われている「部分的に完成した機械」という用語の持つ意味についてご紹介致します。

 

「広義的な機械」とは

 機械指令 第1条「適用範囲」1項(a)「機械」、及び第2条「用語の定義」(a)「機械」に述べられている「機械」という用語は、機械指令の中で厳密な意味を持って扱われております。

また、この「機械」という用語は、第1条1項(a)「機械」~(f)「取り外し可能な機械的伝導装置」という6つのカテゴリに該当するものを表す「広義的な機械」という意味でもあると機械指令ガイドでは述べられています。

このように、機械指令では、この厳密な意味で扱われる「機械」と「広義的な機械」がありますが、各条文が定める義務はこの両方に適用されます。

 

この前提があることに注意して、第1条「適用範囲」1項 (g)「部分的に完成した機械」とは、第2条(g)に定義されているとおり、『部分的に完成した機械は、他の機械、または他の部分的に完成した機械、または装置の中に組み込まれるか、またはそれらと組み合わされることだけを目的としている。それによって機械指令が適用される「機械」を形成する。』と記載されています。

 

従って、部分的に完成した機械とは、それが組み込まれた後に、第1条(a)の「機械」(本指令内で厳密な意味で扱われる機械)と、第1条(a)「機械」~(f)「取り外し可能な機械的伝動装置」にある「広義的な機械」を形成することを目的とした半完成の機械製品(構成機械)であるということを説明しています。

また、ここで扱う「部分的に完成した機械」の定義には、第2条(b)「交換可能な機器」は、含まれません。

 

「部分的に完成した機械(PCM)」とは

 第2条「用語の定義」(g)では、部分的に完成した機械(以下、PCMとします。)について説明が述べられています。

ここで規定されている部分的に完成した機械(PCM)とは、前述の「広義的な機械」という用語とは区別されて使用されています。

部分的に完成した機械を市場へ出荷するためには、特定の手順が必要となります。

(第5条2項では、製造者または代理人は、PCMを市場投入する前に、第13条「部分的に完成した機械の手順」にある要求事項を確実にする義務があることを説明しています。

第13条では、技術文書の作成、組立(組込)説明書の作成や組込宣言について要求されております。)

 

機械指令の対象となるPCMとは、そのPCMを組み込んだ後に機械指令の適用範囲に該当する機械を構成することを意図した製品であるとされています。

 

PCMは、第1条1項(a)~(f)の「広義的な機械」に類似した製品であり、連結された部品またはコンポーネントで構成され、少なくとも1つは動作するが、特定用途(製品機能)を実行するために必要ないくつかの要素が欠けていることを意味しています。

部分的に完成した機械の例として、産業用ロボットは通常、最終的な機械に組み込まれるまで、特定用途を実行できないものとして扱われます。

最終的な機械の製造業者は、ロボットがアセンブリ内で特定用途を安全に実行できるように必要な措置を講じます。

実際には、エンドエフェクターと制御システムの両方を備えた特定用途を実行できる産業用の「独立した機能を持つスタンドアローンロボット」のみが、機械指令の下での完全な機械となります。

このように、産業用ロボットでは、ロボット部分だけでは部分的に完成した機械として扱われます。

エンドエフェクターやロボットの制御コントローラーを含めて、最終的な完成品として取り扱われるということになり、部分的に完成した機械とは、最終的な機械製品(完成機械)に組み込まれることを意図しているということを強調しています。

 

特定の用途(製品機能)を実行できる最終的な「機械」になるためには、部分的に完成した機械をさらに製造する必要があります。

この「さらに製造する」という意味については、製造者の適合性評価によってカバーされた駆動システムを、駆動システムを持たない機械に、ただ単に取り付けるということではありません。

これは、駆動システムの有無だけで判断し、部分的に完成した機械であると見なしてはいけないということに注意しなければなりません。

また、PCMは、輸送手段、建築物や構造物に据え付けられるための準備ができた機械とも区別しなければなりません。

 

さらに、それ自体で特定の用途を実行できるが、必要な保護手段やガードなどの安全コンポーネントが欠けている場合は、PCMとしても見なされないことになっています。

そのような不完全な機械は、機械指令の要求を満たしているとは言えず、CEマークを貼ることや上市することもできません。

欧州現地(現場)で組み立てられた機械は、現場に到着した時点では、適合していない可能性のあるいくつかの部品で構成されるため、PCMとは見なされません。

(これらの部品の1つ以上がPCMの定義を満たしている場合を除きます。)

それは、まだ機械指令が適用される機械であるため、最初に利用可能とされる前に、CEマーキングの適合性評価を受けなければなりません。

 

時々、一部のパーツが欠けている完全な機械は、PCMと混同されることがあります。

欠けているパーツが機械の構成部品ではない場合(例えば、エネルギー源としてのモーター)、その機械の安全性に実質的な影響を与えない場合(ただし、適合性評価として考慮されなければならないが)、機械メーカーは最終機械の安全性とコンプライアンスが機械指令で保証されるように、欠けたパーツの取り付けに関する明確な情報を提供し、機械が完成する前に、それらの指示に従って機械を完成させることができます。

 

PCMは、「ほとんど機械」であることから、機械指令の対象ではない機械構成部品とは区別されなければなりません。

通常、機械の構成部品は、様々な用途の広いカテゴリに統合できます。

 

駆動システムは「部分的に完成した機械」である?

 次に、PCMを説明する文章中にある「駆動システムは、部分的に完成した機械である」という記載について考えていきたいと思います。

この規定は、機械に取り付ける準備ができている駆動システムにも適用されるものであり、駆動システムの個々の構成部品には適用されません。

例えば、機械指令の対象となる機械への取付けに必要な接続を備えた、市販されている内燃機関や高電圧電気モーターは、PCMとして見なされます。

これらは、PCMとして幅広い用途で使用できる汎用品として販売されています。

特定タイプの機械に適合するようにカスタム設計された電気モーターは、PCMとは見なされません。

 

機械指令の付属書Iの必須要求事項では、PCMメーカーが満たすべき要求を定めておりませんが、PCMが満たす全ての要求事項に対する適合性を組込み宣言する必要があります。

PCMが最終機械の制御システムに関連する場合、安全性能/信頼性に関する関連データを含む、安全な組込みを可能にするための重要な情報を取扱説明書に含み、添付されている必要があります。

これは、コントロールユニット/ボードがPCMの不可欠な部分であり、安全機能を提供する場合は、特に重要です。

(注:コントロールボードは、PCMと同じエンクロージャーで供給する必要はありませんが、単一のPCM製品として販売する必要があります)。

最終的な機械の製造業者は、PCMが最終的な機械への組込みに適合していることを確認するために、購入前に組込み宣言書や技術仕様、取扱説明書を確認するようにして下さい。

 

機械指令は、第2条(b)~(g)で定義に該当しない限り、次のような個別の機械部品またはサブアセンブリには適用されません。

(例えば、シール、ボールベアリング、プーリー、弾性カップリング、ソレノイドバルブ、油圧シリンダーなど、特定の用途がなく、機械に組込まれることが意図されているもの)

 

そのような構成部品を組込んだ完全な機械は、関連する必須要求事項に適合する必要があります。

したがって、機械メーカーは適切な仕様と特性を持つ構成部品を選択しなければなりません。

構成部品メーカーは、関連するこのようなサブアセンブリと構成部品を正しく安全に使用できるようにする技術文書を作成しなければなりません。

 

まとめ

 部分的に完成した機械とは、最初から最終製品に組込まれることを意図している製品(例えば、モーター)に対して適用できるものだと解釈できます。

部分的に完成した機械に該当する場合、機械指令の必須要求事項に対する適合性評価を行い、組込み宣言を行います。

完全な機械と適合性評価で違うところはありますが、適合証明の業務フローは基本的には同じです。

自社製品が部分的に完成した機械なのかどうか、製品によっては、解釈に困るケースがあるかと思います。

そのようなお困り事等がございましたら、お気軽にご相談頂ければと思います。

 

関連ページ「CEマーキング適合支援サービス」

関連ページ「機械指令の自己宣言(1)」

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関連ページ「部分的に完成した機械(半完成品)のCEマーキング(2)」

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2020年05月29日