リスクアセスメントの実施

適切なリスクアセスメントの実施

 

前回コラムより、機械のリスクアセスメント(Risk assessment)についての内容を記載しておりますが、今回はその続きとして、具体的なリスクアセスメントの進め方、実施方法についてご紹介します。

機械指令では、規格はA、B、Cの3つの階層に分けられ、指令の要求事項を満足する為には、規格を用いるといった内容を記載させて頂きました。

それでは、具体的にリスクアセスメントをどのように進めていくのか?についてご紹介致します。

 

機械指令の規格選定について

機械指令の対応において、整合規格を選定する際、第1優先として、製品に該当する個別規格であるC規格(製品安全規格)が存在するかどうかを確認します。

個別規格であるC規格がある場合は、優先してそれらの規格を使用しますが、C規格が存在していない場合もあります。

機械指令が発行されてから20年以上が経ち、これまで様々な規格が発行又は改版されていますが、当然既存の全ての機械指令の対象製品を網羅出来ている訳ではありません。

特殊な製品や新たな技術を用いた製品等が年々出てきますので、中々全て機械製品に対しての個別規格を作成するのは難しいと考えられます。

C規格が存在する場合は、C規格の内容に基づき、リスクアセスメントを実施し、規格への適合性を確認する事となりますが、製品に当てはまるC規格が無い場合は、A規格及びB規格を使用して、機械指令への適合を判断する形となります。

イメージとしては、製品全体として、A規格のEN ISO12100での評価、即ちリスクアセスメントを行い、各々のリスクに対しては、当てはまるB規格や電気規格にて評価を行い、機械指令 付属書Iの必須安全及び健康要求事項への適合性を判断するといった形となります。

一例ではありますが、例えば、機械製品に電気に起因するリスクがある場合は、EN 60204-1を使用して、電気安全の確認を行なう、又、インターロックガード機構を備えているのであれば、インターロックガードに関する規格であるEN ISO 14119を使用するということになります。

また、高温表面のリスク等、各部分的なリスクに対し、適切な安全規格を使用する必要が出てきます。

いずれにしても、その機械にどの様なリスクが存在しているのかを確認する為にはリスクアセスメントの実施が必要となります。

それでは具体的なリスクアセスメントの実施方法に入っていきたいと思います。

 

リスクアセスメントについて定められたEN ISO 12100とは?

まず、これまでのご説明の中で何回か出てきましたEN ISO 12100という規格ですが、次にあるとおりリスクアセスメントについて定めた規格になります。

 

(EN)ISO12100(:2010)= JIS B 9700

Safety of machinery - General principles for design – Risk assessment and risk reduction

(機械類の安全性 – 設計の一般原則 – リスクアセスメント及びリスク低減)

 

(EN) ISO12100は、機械安全の基本安全規格であり、A規格という位置付けになります。

この規格は、機械の設計原則や用語及び機械のリスクアセスメントについてを定めています。

リスクアセスメントは、(EN)ISO12100に基づき、進めていきます。

 

リスクアセスメントのチーム作り

リスクアセスメントにとりかかる前に、リスクアセスメントを実施する際の注意点をご紹介させて頂きます。

まず初めに注意しておきたいこととして、リスクアセスメントはチームで実施するものであることを念頭に置き、進めて行かなければならないということです。

リスクアセスメントとは、その製品を使用する中で起こり得るリスクを洗い出し、そのリスクに対して許容できる安全性について考えることですので、製品設計者だけでなく、製造や品質管理、専門コンサルタントというチームで実施していくことでより深いレベルのリスクアセスメントが可能となり、製品の安全性を効果的に追究できるようになります。

チームの規模については、機械の複雑さ、機械がどのプロセスで使用されるか等といった点において、チーム規模は異なると言えます。

当然ながら、あまりにも多い人数でのリスクアセスメントの実施は、メンバー間で合意が取れず、落としどころがわからないなど、現実的ではありません。

但し、機械に関わる方で様々な方面から機械を認識する必要がありますので、様々な部署、立場の方、及び様々な知識を有する方々でチームを構成する必要があります。

よくコンサルタント等の第三者が製造者に代わってリスクアセスメントを実施しますといった触れ込みでホームページ等に業務紹介をしているのを見かけますが、上記の通り、本来のリスクアセスメントはチームで実施するものであり、単独で実施することはありません。

当社で行っているリスクアセスメントサービスも同様で、お客様のチーム作りからメンバーの一員として加えて頂き、製品の適切なリスクの洗い出しから、その対処方法などを回数を重ねて行っていき、リスク低減へつなげていくものになります。

 

リスクアセスメントのチームリーダーの決定

リスクアセスメントのチーム形成の際には、チームリーダーを決定する事が必要です。

以下の内容は、ISO/TR 14121-2というリスクアセスメントの実践の手引きや方法例が記載された技術報告書に記載されているチームリーダーとチームメンバーに要求されている内容をまとめたものです。

 

  適切なリスクアセスメントを行うための要求事項
リーダー 以下に関する責任者
・リスクアセスメントの計画、実施、文書化の確実な実行
・その結果 / 勧告の適切な人物への報告
メンバー ・機械類の設計や機能に関し技術的質問に回答可能である
・機械類がどのように運転、セットアップ、保守、整備されるか等の実務経験を有する
・機械類のタイプや事故履歴を知っている
・関連規則や規格、特にISO12100及び機械類に関する安全性の問題を十分理解している
・(予見可能な誤使用等の)人的要因を理解している

 

これらの内容を基に適切なチームを構成しなければ確実なリスクアセスメントは実施出来ません。

リスク同定、すなわちリスクを洗い出す段階で、漏れが無い様に適切なチームを形成してください。

繰り返しとなりますが、第三者のコンサルタントの立場は、お客様のリスクアセスメントのチームの一員となり、リスクアセスメントを一緒に実施し、内容を確認させて頂く事であり、決してお客様の代わりにリスクアセスメントを委託する事ではありませんので、第三者への依頼の際には注意が必要です。

 

リスクアセスメントは、単に製品機能から洗い出されたリスクだけを考えるのではなく、製品機能の本質や機械構造など、如何に規格要求を網羅しているか、という視点で捉えられなければなりません。

指令要求への適合証明を果たすためには、しっかりと内容が伴っていなければならないため、リスクアセスメントに関しては、経験豊富な第三者エンジニアをチームに入れることをお勧め致します。

 

今回はここまでとし、続きは次回のコラムで記載致します。

イーエムテクノロジーでは、経験豊富な機械安全の専門エンジニアたちが、リスクアセスメント業務を行っております。

リスクアセスメントの実施についてご相談事ございましたら、弊社までお問い合わせ頂ければと思います。

 

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2019年01月04日