機械指令から適用除外される製品(1)

機械指令(2006/42/EC)から除外される製品とは?

 

 

 今回は、欧州CEマーキング機械指令(2006/42/EC)の適用除外製品について、詳細に触れて行きたいと思います。

機械指令(machinery Directive)の適用除外については機械指令原文の第1条2項において、適用除外製品が列挙されています。

 

機械指令に該当しない製品とは、どんな製品?

 機械指令 第1条 2項 機械指令から除外されるもの

(a) 同一部品のスペアパーツとして使用される安全部品であり、機械製造元から供給されるもの

(b) 催し物会場及び/又は遊園地で使用される専用装置

(c) 原子力用に特別に設計され使用される機械で、故障した際に放射線を放出する可能性があるもの

(d) 兵器類(火器を含む)

(e) 以下に示す輸送用の手段:

― 指令2003/37/ECにてカバーされる農業、林業用トラクターのリスク(これらの車両に搭載される機械は除く)

― 理事会指令70/156/EECにてカバーされる自動車及びトレーラー(これらの車両に搭載される機械は除く)

― 理事会指令2002/24/ECにてカバーされる2輪又は3輪自動車(これらの車両に搭載される機械は除く)

― 競技会のみでの使用を意図している自動車

― 空路、水路及び鉄道網による輸送手段(これらの車両に搭載される機械は除く)

(f) 遠洋航海用の船舶、移動式沖合ユニットその様な船舶又はユニットに搭載される機械

(g) 軍事用又は警察用に特別に設計及び製造された機械

(h) 研究所内で一時的に使用される為の特別に設計及び製造された調査用の機械

(i) 鉱山用の巻上げ装置

(j) 芸術公演中にパフォーマーを移動させる事を意図した機械

(k) 以下の領域に該当する電気及び電子製品で、それらが理事会指令73/23/EECにてカバーされるもの

― 家庭用電気機器

― 音響及びビデオ機器

― 情報技術機器

― 通常のオフィス機器

― 低電圧開閉装置及び制御装置

― 電動モーター

(i) 以下の種類の高電圧電気機器

― 開閉装置及び制御装置

― トランスフォーマー(変圧器)

 

以上の製品が欧州機械指令の適用除外としてリストアップされています。

 

これらの製品群は、部分的に欧州機械指令の適用範囲に当てはまったとしても、(例えば、可動部分を有している)機械指令は適用されません。

 

それでは、それぞれの内容について詳しくご説明していきたいと思います。

 

<解説>(a) 安同一部品のスペアパーツとして使用される安全部品であり、機械製造元から供給されるもの

 この内容は、機械の一部分に使用される安全部品に対して適用されるものと考えられます。

機械全体が機械指令に適合していることを前提として、当該機械に使用される(取り付けられる)部品と同じ部品がスペアパーツとして欧州へ供給される場合は、それらのスペアパーツは機械指令の対象とはなりません。

但し、この適用除外は、これらのスペアパーツの製造者が機械の製造者と同じである必要があります。

また、当該機械にのみ使用できるものである必要があると考えられます。

これらの前提条件の下、適用除外とすることが可能です。

 

<解説>(b) 催し物会場及び/又は遊園地で使用される専用装置

 ジェットコースターやメリーゴーランドといった催し物会場や遊園地で使用される装置類は、例え可動部分を有していたとしても、機械指令は適用されません。

現在、これらの装置に適用される欧州の共通指令は存在していない様です。

従って、これらの装置のEU域内に出荷する場合は、各国の法律に従う事が必要となると考えられますので、注意が必要です。

 

<解説>(c) 原子力用に特別に設計され使用される機械で、故障した際に放射線を放出する可能性があるもの

 この適用除外については、原子力発電用、または放射性物質の製造、または処理のために、特別に設計された機械であり、機械の故障が放射線の放出につながる可能性のある機械に該当します。

但し、原子力発電所で使用される機械であっても、当該機械の故障が放射性物質の放出につながらない場合は、機械指令の除外とはなりません。

この内容については、非常に判断が難しい場合もありますので、詳細は都度確認が必要と考えられます。

なお、放射線源を使用するような測定装置等は、放射性物質によるリスクがありますが、原子力産業用の機械には該当しませんので、機械指令の除外対象とはなりません。

 

<解説>(d) 兵器類(火器を含む)

 通常、兵器類は理事会指令91/477/EEC(武器の取得と所有管理に関する欧州指令)が適用されます。

従って、機械指令を適用する必要はありません。

但し、91/477/EECのAnnex Iには、以下の様な記載があり、産業用又は技術目的の火器類は、この指令の火器の定義には該当せず、他の法律が適用される旨の記載があります。

 

(91/477/EEC Annex I Ⅲ項より)

III. For the purposes of this Annex, objects which correspond to the definition of a ‘firearm’ shall not be included in that definition if they:

(a) are designed for alarm, signalling, life-saving, animal slaughter or harpoon fishing or for industrial or technical purposes provided that they can be used for the stated purpose only;

(b) are regarded as antique weapons where these have not been included in the categories set out in Part II and are subject to national laws.

Pending coordination throughout the Union, Member States may apply their national laws to the firearms listed in this Part.

 

産業用、または技術目的として設計された携帯型カートリッジ式固定機械並びに他の衝撃機械(portable cartridge-operated fixing and other impact machinery*)に対しては、機械指令を適用する必要がある事に注意が必要です。

* Portable cartridge-operated fixing and other impact machineryは、機械指令 Annex Ⅳに記載されている機械となりますので、評価方法等には注意が必要です。

 

<解説>(e) 以下に示す輸送用の手段:

 ― 指令2003/37/ECにてカバーされる農業、林業用トラクターのリスク(これらの車両に搭載される機械は除く)

指令2003/37/ECは、2017年末に規則167/2013へ改正され、新規則においては、トラクターに関連する全てのリスクが含まれたようです。

現在はこれらの規則の適用範囲となるトラクターには、機械指令を適用する必要は無いものと考えます。

但し、トラクターに搭載される機械(油圧機器等)は、機械指令の対象範囲となる可能性がありますので、注意が必要となります。

 

― 理事会指令70/156/EECにてカバーされる自動車及びトレーラー(これらの車両に搭載される機械は除く)

理事会指令70/156/EECは、2009年4月29日に指令2007/46/ECに置き替えられています。

指令2007/46/ECは、4輪以上且つ最大設計スピードが25km/hを上回る且つ、道路上で使用する為に設計及び製造された動力車両等に適用されます。

指令2007/46/ECは、以下の通り移動式機械に関する任意の型式認証及び個別認証を意図していますが、これらは機械指令2006/42/ECの適用を損なうものではないとしていますので、移動式機械については機械指令の適用が必要となります。

 

(2007/46/EC Article 1 Subject matter 3項より)

3. Type-approval or individual approval under this Directive is optional for the following vehicles:

(a) vehicles designed and constructed for use principally on construction sites or in quarries, port or airport facilities;

(b) vehicles designed and constructed for use by the armed services, civil defence, fire services and forces responsible for maintaining public order; and

(c) mobile machinery, to the extent that these vehicles fulfil the equirements of this Directive. Such optional approvals shall be without prejudice to the application of Directive 2006/42/EC of the European Parliament and of the Council of 17 May 2006 on machinery.

 

なお、道路上での使用を意図していない自動車両類(オフロード車、ゴルフカート等)については、競技用専用である場合を除き、機械指令2006/42/ECを適用する必要があります。

また、自動車やトレーラに搭載される巻上げ機やコンクリートミキサー等についても、機械指令2006/42/ECを適用する必要があります。

 

― 理事会指令2002/24/ECにてカバーされる2輪または3輪自動車(これらの車両に搭載される機械は除く)

道路上での使用をもっぱら意図していない自動車(例えば、オフロードバイク等)を除き、2002/24/ECに適用される2輪又は3輪自動車は機械指令2006/42/ECの適用除外となります。

指令2002/24/ECには以下の通り適用除外条件が記載されていますので、競技用のものを除き、これらの適用除外に該当する自動車は機械指令2006/42/ECの適用範囲となると考えて頂いて問題無いかと思います。

 

(2002/24/EC Article 1 1項より抜粋)

This Directive does not apply to the following vehicles:

(a) vehicles with a maximum design speed not exceeding 6 km/h;

(b) vehicles intended for pedestrian control;

(c) vehicles intended for use by the physically handicapped;

(d) vehicles intended for use in competition, on roads or in off-road conditions;

(e) vehicles already in use before the application date of Directive 92/61/EEC;

(f) tractors and machines, used for agricultural or similar purposes;

(g) vehicles designed primarily for off-road leisure use having wheels arranged symmetrically with one wheel at the front of the vehicle and two at the rear;

(h) cycles with pedal assistance which are equipped with an auxiliary electric motor having a maximum continuous rated power of 0,25 kW, of which the output is progressively reduced and finally cut off as the vehicle reaches a speed of 25 km/h, or sooner, if the cyclist stops pedalling,

 

― 競技会のみでの使用を意図している自動車

競技会用の自動車は、道路上又はオフロードでの使用の何れを意図しているかに関わらず、機械指令の適用範囲とはなりません。

 

― 空路、水路及び鉄道網による輸送手段(これらの車両に搭載される機械は除く)

機械指令2006/42/ECには、全ての飛行機又は水路による輸送手段は適用されません。

しかしながら、船外機においては機械指令2006/42/ECが適用される事に注意が必要です。

又、鉄道網による輸送手段の適用除外条件については、地下作業用のレール上を走る機械機械のように、国家鉄道網に接続されない鉄道上を移動する事を意図した機械には適用されない事に注意が必要です。

 

続きは、次回コラム「機械指令から適用除外される製品(2)」にてご紹介していきます。

機械指令の適用を受ける製品なのかどうか?など、CEマーキングのお悩みごと、ご相談事がございましたら、弊社までお気軽にお問合せ頂ければと思います。

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2018年12月10日